イランにはアゼルバイジャン本国より多くのアゼリ人がいる――「少数民族問題」では読み違える巨大な存在
イランのアゼリ人は「少数民族」なのか
イランについて考えるとき、日本ではペルシャ人を中心とする単一民族的な国家という印象が強いように思います。しかし実際のイランは多民族国家です。ペルシャ人だけでなく、アゼリ人、クルド人、ロル人、バルーチ人、アラブ人、トルクメン人などが暮らしています。その中で特に重要なのが、アゼルバイジャン語を母語とするアゼリ人です。イランではしばしば自らを単に「トルコ人(トルク)」と呼びます。『イラン百科事典』も、イランのアゼルバイジャン人は自らを「Türk」と呼ぶことが一般的であると指摘しています(https://www.iranicaonline.org/articles/azerbaijan-vi/)。問題は人口です。イラン政府は民族別人口について信頼できる詳細な国勢調査を公表していないため、正確な人数はわかりません。米国務省の人権報告は、アゼリ系住民を「1800万人以上」、全人口のおよそ24%と推計し、他の民族的少数派より国家と社会に深く統合されていると記しています(https://2021-2025.state.gov/reports/2023-country-reports-on-human-rights-practices/iran/)。この数字自体にも幅を考えておく必要がありますが、少なくとも1000万人を大きく超える巨大な人口集団であることは間違いありません。
ここでアゼルバイジャン共和国と比較すると興味深いことがわかります。同国国家統計委員会によると、2026年7月1日現在の人口は1027万3450人です(https://www.stat.gov.az/news/index.php?id=6862&lang=en)。したがって、米国務省の「1800万人以上」という推計を採用しても、イラン国内のアゼリ系住民はアゼルバイジャン共和国の総人口の約1・8倍に達します。カーネギー国際平和財団には2026年3月、イランのアゼリ人を「2000万人以上」とする分析も掲載されています(https://carnegieendowment.org/emissary/2026/03/armenia-azerbaijan-iran-war-fallout)。つまり世界のアゼリ系住民について考える場合、独立国家アゼルバイジャンだけを見てはいけません。人口規模では、むしろイラン側のアゼリ社会の方が大きい可能性が高いのです。