スターリン『レーニン主義の基礎/レーニン主義の諸問題』を読む――革命の「歴史的起源」をどう捉えたか

スターリンのレーニン主義論は、後世の「スターリン主義」という言葉だけから読むと実像を見失います。1951年モスクワ刊の日本語版を手がかりに、まず「レーニン主義の歴史的起源」を原文に即して読み、その強さと重大な弱点を考えます。
佐藤優 2026.11.04
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外国語図書出版所とは何か

 今回取り上げるのは、スターリン著『レーニン主義の基礎/レーニン主義の諸問題について』(モスクワ・外国語図書出版所、1951年)です。表紙には「万国の労働者団結せよ!」とあり、スターリンの写真を挟んで、本文に入ります。奥付に相当する冒頭の説明によれば、この日本語訳は、マルクス=エンゲルス=レーニン研究所編集のスターリン著作集第5巻、第8巻を底本としています。つまり日本で独自に編集されたスターリンの著作集ではなく、ソ連側がスターリンのレーニン主義論を体系的に外国語で普及させる目的で刊行した書物です。

 ここで「外国語図書出版所」という出版社について少し説明しておく必要があります。ロシア語では「Издательство литературы на иностранных языках」、文字通りには「外国語による文献の出版社」です。これは外国の書物をロシア語に翻訳する出版社ではありません。前身は1931年に設立された「ソ連邦外国人労働者出版協同組合」で、1938年に「外国語による文献の出版社」と改称されました。マルクス主義・レーニン主義文献、政治書、教科書、参考書、文学作品などを外国語で刊行し、ソ連国内の外国人だけでなく国外にも届ける役割を担った国家出版社です。1963年に別系統の「外国文献出版所」と再編され、その人文・社会科学部門は後の「プログレス出版社」、自然科学・技術部門は「ミール出版社」へとつながりました。

 注意したいのは、1946年に設立された「Издательство иностранной литературы(外国文献出版所)」とは別組織だったことです。こちらは外国の科学・文化文献をロシア語に翻訳してソ連国内に紹介する出版社でした。1950年代には両者が並存していました。前者が「ソ連から外国へ」、後者が基本的に「外国からソ連へ」という方向性を持っていたと理解すると分かりやすいでしょう。1963年の再編で両組織の部門がプログレスとミールへ統合されます。ロシア公文書館の案内にも、この再編の経緯が記録されています。

本書はどのように構成されているか

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