ベラルーシの高校数学から考える――「深く学ぶ」機会をどう保障するか

ベラルーシの高校数学には、標準課程と発展課程があります。授業時間、演習の指導体制、選択講座の設計から、数学を深く学ぶ機会をどう保障するかを考えます。制度と実態を分け、日本の学校教育への示唆を探ります。
佐藤優 2026.11.04
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ベラルーシの高校段階の数学教育を調べると、日本の教育を考えるうえでも興味深い仕組みが見えてきます。同じ学年の数学に、標準課程と発展課程が設けられているのです。ロシア語では、それぞれ「базовый уровень」「повышенный уровень」といいます。後者は、基礎的な内容を含みながら、その内容を深めて学ぶ課程です。

 ベラルーシでは、第1~4学年が初等教育、第5~9学年が基礎教育、第10~11学年が後期中等教育に当たります。日本の高校に相当する段階は、基本的に最後の2年間です。ただし、学校制度の区切りが異なるので、日本の高校3年間と、この2年間の学習内容をそのまま比較することはできません。第9学年までに何を学んでいるかを含めて考える必要があります。

 そのうえで注目したいのが、数学を深く学ぶために、授業時間と教育内容を組み合わせている点です。

 公立学校が掲載する教育省の2020/21年度の指導資料によると、第10学年の数学は標準課程が週4コマ、発展課程が週6コマでした。発展課程では、代数に4コマ、幾何に2コマを配分することが推奨されています。これは過年度の数値であり、現在のすべての学校に一律に当てはまる時間数として扱うべきではありません。しかし、発展課程の設計思想を知る手がかりにはなります。

 標準課程に対して、週当たりの時間を5割増やし、代数と幾何を並行して学びます。さらに、同資料では、発展課程の問題演習に際して学級を二つの集団に分ける扱いも示されています。学ぶ内容を増やすだけでなく、問題に取り組み、指導を受ける時間を確保しようとしているのです。

 学習内容にも目を向けてみます。

 2020年の第10学年の教育課程改訂資料を見ると、発展課程には、n乗根、多項式、導関数、空間の座標とベクトルなどが位置づけられています。ここで注目されるのは、導関数が標準課程にも導入されていることです。微分の初歩に触れること自体を、一部の生徒だけに限定する構成ではありません。共通の学習を土台としながら、発展課程では学ぶ範囲や深さに違いを設けています。

 第11学年用のアレフィエワ、ピリュトコ著『代数』の2020年版では、べきの概念の拡張、指数関数、対数関数、それらに関する方程式や不等式が扱われています。日本の高校数学を学んだ人にとっても、なじみのある内容でしょう。

 したがって、ベラルーシの数学教育の特徴を、難しい単元を早く教えることだけに求めるのは適切ではありません。むしろ、共通する数学的内容を、どの程度の時間をかけ、どのような演習によって身につけさせるかに目を向けるべきです。

 通常授業を補う選択講座も興味深いです。

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